「大出水」という独特の名称には、その土地が持つ地形と豊かな水勢への畏敬の念が込められています。古来、南九州のシラス台地は水はけが良すぎるため、地表に水が残りにくく、稲作や生活用水の確保に苦労してきた歴史があります。その中にあって、地面から大量の水がこんこんと吹き出す場所は、まさに神から授かった命の源泉でした。「大きく出づる水」すなわち「大出水」という名は、渇水に悩まされた先人たちの深い感謝から名付けられたものです。
都城市高崎町の大出水の湧水周辺は、古くから地域住民の共同炊事場や農業用水の要として大切に守り継がれてきました。水利権を巡る争いを防ぐため、厳格な水路管理と清掃活動が村落共同体の絆として機能してきた経緯があります。
また、先述した富山県黒部市生地の大出水も同様に、黒部川の激しい扇状地氾濫と戦いながら、清らかな伏流水を「清水(しょうず)」と呼んで共生してきた町並みの象徴です。弘法大師の伝説とともに語り継がれる生地の湧水群と、南九州の火山灰大地で命を支え続けた都城の大出水。場所は離れていても、水辺に根付く日本人の「水を敬い、清浄に保つ文化」が共通して息づいています。