経鼻胃管を通じた栄養補給を提案された家族が真っ先に抱く疑問が、「これで何年生きられるのか」という点です。日本老年医学会などの臨床報告や国内外の追跡調査によると、経鼻胃管を導入した高齢者の平均余命はおよそ数カ月から1年未満、疾患の進行度によっては1〜3カ月前後で命を終えるケースも珍しくありません。
余命を左右する最大の要因は、栄養チューブそのものではなく「なぜ食べられなくなったのか」という根本原因にあります。特に高齢者に多い誤嚥性肺炎を契機とした経管栄養導入では、経鼻チューブを留置していても唾液の不顕性誤嚥や胃食道逆流を完全に防ぐことはできません。結果として肺炎を再発し、導入から半年以内に呼吸不全で亡くなる割合が高いのが医療現場の実像です。
また、認知症末期における経管栄養の予後に関しては、世界的な医学コンセンサスがすでに確立されています。米国老年医学会(AGS)や国内の終末期医療のガイドラインでは、「重度認知症患者に対する経管栄養は、生命予後の延長、誤嚥性肺炎の予防、褥瘡の改善、QOL(生活の質)の向上のいずれにも寄与しない」と明記されています。点滴や経管栄養を行わなくても、生命維持に必要な最小限の水分で身体が自然に適応していくプロセスが確認されており、「人工栄養を入れたから劇的に寿命が延びる」という考え方は医学的根拠に乏しいのが実態です。