美輪明宏さんの名声をさらに不動のものにしたのが、昭和を代表する知性たちとの濃密な交流です。銀巴里には、三島由紀夫、江戸川乱歩、川端康成、吉行淳之介、寺山修司、中原淳一など、錚々たる文化人が夜な夜な集いました。
なかでも三島由紀夫との関係は深く、三島は美輪さんの美貌を「天上界の美」「君の唯一の欠点は、僕に惚れないことだ」と最大級の賛辞で讃えました。三島が美輪さんのために戯曲化した江戸川乱歩原作の舞台『黒蜥蜴(くろとかげ)』は、演劇史に残る傑作となります。美輪さんが演じる美貌の女盗賊・黒蜥蜴と、三島が熱望した名探偵・明智小五郎との緊迫した心理戦は、劇場を埋め尽くした観客を熱狂させました。
美輪さんは単なる「美貌のミューズ」にとどまらず、文豪たちと対等に美学や哲学を論じ合える卓越した教養の持ち主でした。妥協を許さないプロ意識と高い知性が、気難しい天才たちの心を捉えて離さなかったのです。