まずは、金子みすゞが遺した『こだまでしょうか』の全容を振り返りましょう。短い行数の中に、人間の素直な感情の揺れ動きが見事に収められています。
【こだまでしょうか 全文】
「遊ぼう」っていうと
「遊ぼう」っていう。
「馬鹿」っていうと
「馬鹿」っていう。
「もう遊ばない」っていうと
「遊ばない」っていう。
そうして、あとで
さみしくなって、
「ごめんね」っていうと
「ごめんね」っていう。
こだまでしょうか、
いいえ、誰でも。
この作品の元ネタとなったのは、大正時代末期、みすゞが市井の子どもたちの無邪気なやりとりや、自身の繊細な観察眼から紡ぎ出した日常の一コマです。彼女は『大漁』や『私と小鳥と鈴と』に代表されるように、見落とされがちな小さな命や人間の心の機微に誰よりも敏感でした。子ども同士の何気ない喧嘩と仲直りのプロセスを通じて、人間関係の普遍的な法則を描き出しています。