料理の現場で最も差が出るのが、揚げ物ととろみづけの工程だ。から揚げを作る際、衣に片栗粉を使うと表面の水蒸気が一気に抜けて固いデンプン膜が作られ、時間経過に強い「ザクザク」「ガリガリ」とした軽快な食感が生まれる。一方で薄力粉をまぶすと、水分を抱え込みやすい性質から「サクッ」としながらも内部の肉汁を閉じ眠らせた、柔らかくジューシーな仕上がりになる。
とろみづけにおける両者の挙動も対照的だ。片栗粉は少量の水で溶いて熱い汁物に加えると、加熱によって一気に糊化(こか)を起こし、透明感のある強い粘性を生み出す。ただし、沸騰させ続けたり口の中の唾液酵素に触れたりすると粘性が急激に低下する弱点もある。これに対し、薄力粉でとろみをつける場合は油脂と一緒に炒めてルーを作るのが基本となり、白く濁った滑らかで持続性のあるとろみが完成する。
万が一、片栗粉の代わりに薄力粉をスープへ直接投入すると、粉っぽさが残り、ダマの塊が浮く事態に陥る。代用する際は、薄力粉をあらかじめバターや油で練り合わせるか、じっくりと加熱して粉に火を通す手間が不可欠だ。近年の調理科学の分析では、これら2つの粉を半々に混ぜて衣にするブレンド手法が、時間が経っても崩れない究極の食感を生み出す裏ワザとして実証されている。