「自衛隊の強力なライフルなら巨大なクマも瞬時に倒せるのではないか」と考えられがちですが、弾薬や銃器の構造面から見ても自衛隊の装備はクマ駆除に適していません。
自衛隊が配備する89式5.56mm小銃や20式5.56mm小銃で使用される弾薬は、完全被甲弾(フルメタルジャケット弾)と呼ばれる対人用の軍用規格です。この弾丸は貫通力が高く、硬い標的を撃ち抜く性能に優れている反面、対象の体内で変形・粉砕して強大な運動エネルギーを瞬間的に伝える構造にはなっていません。
体脂肪が厚く骨格が頑丈なヒグマや大型のツキノワグマに対し、小口径の5.56mm軍用弾を撃ち込んでも、急所を完全に貫かない限り致命傷を与えられず、かえって凶暴化させて突進を招く危険性があります。猟師が使用するライフル弾(30-06や308ウィンチェスターなど)や散弾銃のスラッグ弾は、弾頭が体内で大きく広がり強烈なショックを与える設計(ソフトポイント弾など)になっており、軍用弾とは用途が根本から異なります。
さらに軍用弾は貫通力が高すぎるため、クマの体を突き抜けた弾丸や地面・岩に跳ね返った弾丸(跳弾)が数百メートル以上先まで飛び、民家や通行人に命中する大惨事を引き起こしかねません。市街地近郊での軍用小銃発砲は、極めてハイリスクな選択肢です。