単なる事件解決の推理物にとどまらないのが、本作最大の強みだ。重厚なスリルが全編を覆う一方で、底底に流れるのは登場人物たちの孤独と葛藤を描く濃密なヒューマンドラマの骨太な手触りである。
事件の容疑者、被害者の家族、そして追う側の警察官。それぞれの視点が複雑に交錯するなかで、観客は誰が被害者で誰が加害者なのかという単純な二元論を揺さぶられる。「誰もが当事者になり得る」という極限状態のリアルな心理描写は、観る者の胸を締め付ける。サスペンスとしての圧倒的な面白さと、人間存在の奥深さを突きつけるドラマ性が絶妙なバランスで同居している。