新幹線のような長距離列車内で麻疹の感染リスクが特に警戒される理由は、その圧倒的な感染経路と伝播力にあります。はしかのウイルスは飛沫感染や接触感染だけでなく、ウイルス粒子が空気中を長時間漂う空気感染(飛沫核感染)を引き起こします。その基本再生産数(1人の感染者が免疫を持たない集団で何人に感染させるかを示す指標)は12〜18に達し、インフルエンザ(1〜2程度)やコロナ禍初期の変異株を大きく上回る数値を記録します。
現代の新幹線は高度な空調換気システムを備えており、車内の空気はおよそ6〜8分で外気と完全に入れ替わる構造になっています。しかし、同一車両内でウイルスが排出され続けていた場合、換気による希釈が追いつく前に浮遊する微小粒子を吸い込んでしまうリスクは排除できません。特に以下のような状況では感染リスクが高まります。
・感染者の前後左右2〜3列以内の座席に長時間着席していた場合
・感染者が乗車中にマスクを外して飲食や会話をしていた場合
・乗降口付近やトイレ、喫煙ルームなどの共用設備を同一時間帯に利用した場合
・免疫(抗体)を全く持っていない、あるいは抗体価が著しく低下している場合
マスク着用や手洗いだけでは空気感染を完全に防ぐことは困難です。そのため、同一車両に同乗していた事実があるだけで、公衆衛生上は「濃厚接触の可能性がある対象者」として扱われます。