スーパーの鮮魚コーナーに並ぶ牡蠣を見て、「生食用の方が新鮮で高級だから、パスタに使っても美味しいはずだ」と思い込んでいないでしょうか。これは日本の消費者の間で最も根強く残る誤解の一つです。食品衛生法における「生食用」と「加熱用」の区分は鮮度の優劣ではなく、採取された海域の環境と流通前の浄化処理の有無によって法的に定められています。
生食用牡蠣は、大腸菌群などの細菌数が極めて少ない指定海域で収穫されるか、収穫後に人工海水で2〜3日間にわたり絶食状態で循環殺菌(紫外線照射など)されます。この工程により安全性は担保されるものの、牡蠣は自身のエネルギーやグリコーゲンを消費するため、身痩せし、旨味アミノ酸の総量はどうしても低下してしまいます。対して加熱用牡蠣は、生活排水の影響が多少あるもののプランクトンが爆発的に豊富な沿岸部・河口付近で育ち、浄化処理を経ずに水揚げ直後のパンパンに肥えた状態で出荷されます。
上記の客観的データが示す通り、加熱用牡蠣と生食用の決定的な違いは旨味成分の凝縮度にあります。パスタのソースに溶け込ませるべき出汁の厚みを追求するならば、迷わず加熱用パックを手に取ることがプロ仕様への第一歩です。