パンの耳(クラスト部分)は、本来パンの中で最も小麦の芳醇な香りとうま味が凝縮されている部位です。製パンの焼成工程において、表面は高温の熱風に直接さらされるため、アミノ酸と糖が結びつく「メイラード反応」が最も強く起きています。つまり、化学的には白いクラム(中身)以上に豊かな風味ポテンシャルを秘めているのです。
それにもかかわらず「耳はパサついておいしくない」と感じられるのは、空気に触れて水分が不均一に抜け、デンプンが老化(β化)していることが原因です。この状態のパンの耳を劇的においしく蘇らせるには、次の2つのアプローチが決定打となります。
第一に、「中途半端な水分を完全に飛ばしてクリスピー化させる」こと。第二に、「油脂や卵液を均一に吸わせてしっとり感を再構築する」ことです。この物理的・化学的アプローチを意図してコントロールするだけで、単なる余り物が専門店級のスイーツや濃厚なおかずに生まれ変わります。