新聞連載漫画としてスタートした長谷川町子の原作『サザエさん』において、フグ田マスオというキャラクターの描かれ方は当時としては非常に斬新だった。戦後の混乱期から高度経済成長期へと向かう日本において、夫が妻の実家に身を寄せるライフスタイルは決して一般的ではなかったが、時代の変化に伴う家族像の柔軟性をいち早く表現していた。
原作でのマスオは、単なる気弱なサラリーマンにとどまらない。愛妻家でありながら、個性的でエネルギッシュな磯野家の人々と絶妙なバランスで調和する人間味にあふれている。時にサザエと夫婦喧嘩をし、時に仕事帰りに一杯引っかけ、趣味の麻雀やゴルフに高じるといった等身大の姿だ。長谷川町子が描いたこのリアリティと人間臭さこそが、作品に時代を超えた強靭な魅力を与えている。