放送当時のギャラクシー賞大賞をはじめ、数々の栄誉に輝いたテレビドラマ『カーネーション』。本作が歴代の朝ドラ作品群の中でも「最高傑作」と称される最大の要因は、徹底した人間描写の生々しさと清々しさの共存にあります。
従来の朝ドラで描かれがちだった「常に品行方正で健気なヒロイン」像を打ち破り、糸子は怒り、叫び、時に激しい欲深さやエゴを剥き出しにします。その泥臭い生命力こそが、戦前・戦中・戦後の激動期を生き抜いた人々の真の姿として視聴者の胸を打ちました。
この骨太な物語の土台を築いたのが、脚本家・渡辺あや氏の卓越した筆力です。映画『ジョゼと虎と魚たち』などで知られる渡辺氏は、登場人物の誰もを単なる「善人」「悪人」に仕立てることなく、矛盾を抱えた一人の人間として丁寧に彫り深く描きました。岸和田ことばの小気味よいリズムと、計算し尽くされた伏線回収の見事さは、脚本の手本として業界内でも極めて高い評価を獲得しています。
さらに、オープニングを彩る椎名林檎さんによる主題歌「カーネーション」の存在も見逃せません。母性と情熱、そして祈りを含んだ壮大なオーケストレーションと美しい旋律は、毎朝の放送の幕開けを荘厳に飾り、物語の芸術性を一段高いステージへと引き上げました。