ゲイリー・オールドマンの名を日本で不動のものにしたのが、リュック・ベッソン監督の傑作アクション『レオン』(1994年)における麻薬取締局の悪徳捜査官、ノーマン・スタンフィールド役です。映画史に残る悪役ランキングを作成すれば、必ず上位に名を連ねる伝説的な怪演でした。
クラシック音楽を愛でながら、平然と一家惨殺を指示する冷酷さ。カプセル入りの薬物を口に含み、首の骨を鳴らしながら恍惚の表情を浮かべる演技は、映画館の観客を恐怖で凍りつかせました。当時のメイキングインタビューにおいて、リュック・ベッソン監督は「テイクごとにゲイリーは異なる即興演技を仕掛けてきた」と述懐しています。クラシックを大音量で流しながら銃撃戦を行う有名なシーンも、オールドマンの内なる即興性とリズム感から昇華されたものでした。
この時期の彼は、映画『不滅の恋/ベートーヴェン』(1994年)でベートーヴェンの苦悩を全身で体現するなど、美しさと激しい情念が同居する役柄で映画ファンを熱狂させ続けました。狂気と知性、そしてどこか壊れてしまいそうな儚さが混ざり合った演技は、同世代の俳優陣の中でも突出した評価を獲得していました。