「日中は比較的落ち着いているのに、布団に入ると途端に咳き込んで眠れない」「夜中の2時か3時に激しい咳で目が覚め、吐き気をもよおすほど苦しい」――SNSの健康相談コミュニティや医療機関の問診票には、夜間の咳に生活を破壊されている切実な声が溢れています。中には「家族に咳の音で迷惑をかけてしまう罪悪感から、別室で一人座ったまま夜を明かしている」という深刻な手記も見受けられます。
なぜ乾いた咳は夜間に悪化するのか。そこには人体の生理的メカニズムと室内環境の2つの要因が絡み合っています。
第一の理由は、自律神経の日内変動です。夜間から早朝にかけては、身体を休息させる副交感神経が優位になります。副交感神経が優位になると、全身の筋肉が緩む一方で、気管支は収縮して内腔が細くなります。健康な状態であれば問題になりませんが、炎症によって気道粘膜が過敏になっている場合、わずかな狭窄が強い物理的刺激となり、咳受容体を激しく刺激してしまうのです。
第二の理由は、就寝環境のアレルゲンと温度変化です。敷布団や枕には微細なダニの死骸やフン、ハウスダストが高密度に潜んでおり、横になることでこれらをダイレクトに吸い込みます。さらに、深夜から明け方にかけての室温低下(冷気の吸入)は気管支平滑筋を直接刺激します。逆流性食道炎を合併しているケースでは、仰向けになることで胃酸が食道へ逆流しやすくなり、気管支への神経反射を増幅させる三重苦に陥ります。