着付け現場や道場での観察調査を行うと、たすき掛けで袖がずり落ちてしまう人の大半が「袖の通し方」と「力加減」に共通の誤りを抱えていることが判明しました。
たすき掛けの本来の目的は、腕の付け根を強く縛ることではありません。「袂(たもと)の重みを利用して袖を背中側に逃がす」ことにあります。きつく締め上げすぎると、腕を前に伸ばした瞬間に背中側の着物が引っ張られ、胸元や衣紋(えもん)が崩れる直接の原因となります。
【着崩れを防ぐ3大現場テクニック】
1. たすきを掛ける前に「袖をコンパクトにたたむ」
袖をそのままにしてたすきを通すと、布地が挟まって摩擦が生じ、着崩れやすくなります。袖口を持って内側に二つ折りにし、腕をすっきりと出してからたすきを掛けることで、余計なテンションがかかりません。
2. 交差の位置は「肩甲骨のくぼみ」に固定する
背中の交差点が高すぎると首が圧迫され、低すぎると腰回りの帯に乗って滑ってしまいます。背骨の上、左右の肩甲骨が最も動く中心点に交差を持ってくると、腕を激しく動かしてもたすきが上下にズレません。
3. 滑りやすい絹織物には「二度絡げの本結び」を用いる
ツルツルとした正絹や化学繊維の着物では、通常の結び方だと結び目が徐々に開いてきます。最初のひと結びを2回くぐらせる「二重からげ」にしてから本結びを行うことで、解くときは簡単なまま、作業中の緩みを完全にシャットアウトできます。