ヨーロッパの移民問題と反イスラムの潮流は、政治の勢力図を根本から塗り替えました。かつては周縁的存在だった反イスラムを掲げる極右政党が、いまや各国で第一党や連立与党の有力候補へと躍進を遂げています。
オランダではヘルト・ウィルダース氏率いる「自由党(PVV)」が議会第一党となり、フランスの「国民連合(RN)」、ドイツの「ドイツのための選択肢(AfD)」、イタリアの「同盟」やスウェーデンの「スウェーデン民主党」など、反移民・反イスラムを掲げるポピュリズム政党が軒並み支持を拡大しました。これらの政党は「伝統的な欧州の文化とアイデンティティを守る」という大義名分を掲げ、治安改善や移民流入の厳格制限を有権者に約束しています。
欧州の緊張を象徴するのが、スウェーデンやデンマークで相次いだコーラン焼却事件の経緯です。極右活動家らが警察の許可を得て公衆の面前でコーランを燃やすパフォーマンスを行い、「言論および表現の自由の行使」を主張しました。これに対し、イスラム諸国では大規模な抗議デモや自国大使館の襲撃、スウェーデン製品の不買運動が勃発。外交問題へと発展した結果、デンマーク政府は「宗教文書の不適切な取り扱いを禁止する法案」を可決し、表現の自由を制限してでも治安と国際関係を優先する苦渋の選択を迫られました。
この一連の騒動に対し、国際世論は二分されました。西欧のリベラル層からは「宗教冒涜は下品だが法で規制すべきではない」という意見が出る一方、ムスリムコミュニティ側からは「信徒の尊厳を踏みにじる明白なヘイトスピーチである」と激しい反発が寄せられ、相互の溝はかつてないほど深まっています。