『あんスタ』の初期ストーリーにおいて、夢ノ咲学院は天祥院英智率いる生徒会の専制支配下にありました。その中で衣更真緒は、「生徒会役員(会計)」でありながら「反逆の旗印たるTrickstarのメンバー」でもあるという、極めて過酷な二重スパイ的ポジションに身を置いていました。
当時、多くの読者が「なぜ真緒が生徒会側に残っていたのか」に疑問を抱きました。その答えは、彼が単なる体制の駒ではなく、「学院の日常が崩壊しないための安全弁」として機能していた点にあります。どちらか一方に肩入れして関係を断絶させるのではなく、双方が致命的な破滅を迎えないよう裏で根回しを続け、バランスを取り持っていたのです。
その後、メインストーリー第1部の革命を経て英智たちが卒業・世代交代を迎えるにあたり、次期生徒会長に真緒が指名された経緯には明確な必然性があります。英智自身が「私とは異なる、誰からも愛され、誰も切り捨てない王」として真緒の手腕を認めたことに加え、真緒自身も「自分が矢面に立つことで、仲間たちが自由に羽ばたける場所を守る」という主体的な覚悟を決めたからです。流されるままの苦労人から、組織の痛みを引き受けるトップへの脱皮は、作品屈指の成長ドラマとして語り継がれています。