ロシアW杯を語る上で避けて通れないのが、大会開幕まで約2カ月に迫った2018年4月9日のヴァイッド・ハリルホジッチ監督電撃解任です。最終予選を首位で突破した指揮官を本大会直前で更迭する前代未聞の事態に、日本サッカー界内外は激震に見舞われました。
日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三会長(当時)が会見で明かした理由は、「選手とのコミュニケーション不足や信頼関係の希薄化」でした。デュエル(1対1の競り合い)や徹底的な縦への速さを求めたハリルホジッチ体制下では、個々のストロングポイントと戦術の乖離、チーム内の閉塞感が限界に達していたことが、後の選手たちの手記でも明かされています。
火中の栗を拾う形で急遽就任したのが、JFA技術委員長を務めていた西野朗監督でした。西野監督が最初に着手したのは、戦術の抜本的刷新ではなく「心理的安全性の回復」と「チームの再統合」です。ハリル体制で序列を下げていた本田圭佑、香川真司、岡崎慎司らの経験豊富なビッグ3を呼び戻し、キャプテンの長谷部誠を中心に選手間の対話を促すフラットな組織作りへと舵を切りました。