ネット上のQ&Aサイトや口コミで時折見かける「飲むヨーグルトで鉄分を摂っても無意味」という主張。この噂が生まれた背景には、栄養学における「カルシウムと鉄の相互作用」に関する断片的な知識があります。
確かに単体のミネラル研究において、カルシウムと非ヘム鉄(植物性食品や添加強化鉄に多い無機鉄)は小腸上皮の吸収経路(DMT1トランスポーター)で競合するため、大量のカルシウムが鉄の取り込みを一時的に阻害することが報告されています。しかし、発酵乳加工品である飲むヨーグルトの体内動態は、単純な栄養素の足し算引き算ではありません。
ヨーグルトに含まれる乳酸やクエン酸などの有機酸には、水に溶けにくい非ヘム鉄をイオン化して包み込む「キレート作用」があります。この働きによって腸内での鉄の沈殿を防ぎ、溶解度を高めるため、競合による吸収阻害を相殺して効率的な吸収を促す環境が整えられています。食品メーカーの臨床試験データでも、鉄強化発酵乳の摂取によって血中フェリチン(貯蔵鉄)濃度やヘモグロビン値の改善が確認されており、「毎日飲んでも意味がない」という言説は科学的に否定されています。