コストパフォーマンスを追求して牛タンブロックを購入した場合、最も重要な工程が「部位の切り分け」です。牛タンは1本(約1kg〜1.5kg)の中で、根元から先端にかけて脂の乗りと肉質が劇的に変化します。
失敗を防ぐための牛タンブロックの切り方は、まず全体を以下の3つの部位に三分割することからスタートします。
1. タン元(全体の約20〜25%):
舌の根元部分にあたり、最も脂が乗って柔らかい最上級部位です。断面には見事なサシが入っており、厚さ8mm〜10mm前後の「極厚切りステーキ・焼肉」に最適です。
2. タン中(全体の約40〜50%):
適度な脂と赤身の歯ごたえが調和した万能部位です。厚さ2mm〜4mmの薄切りにして、王道のネギ塩焼きや塩レモン炒めに仕立てるのが最も適しています。
3. タン先・タン裏(全体の約25〜30%):
舌の先端および下側の筋肉で、脂が極めて少なくスジが密集しています。焼き物には適さないため、じっくり熱を通してコラーゲンをゼラチン化させる煮込み料理専用として切り分けます。
プロが実践する「牛タン下処理方法」のステップ
生臭さを完全に消し去り、旨味を凝縮させるための牛タン下処理方法は次の手順で行います。
まずはブロック表面の余分な血やドリップを徹底的に流水(または3%の薄い食塩水)で洗い流し、キッチンペーパーで水分を完全に拭き取ります。皮付きタンの場合は、半解凍(芯がわずかに凍った状態)のタイミングで、皮と赤身の境目に包丁を滑らせるようにして硬い外皮を削ぎ落とします。
家庭でスライスする際も、「半解凍状態」でカットするのが断面を美しく均一に仕上げる最大のコツです。完全に解凍された肉は柔らかすぎて包丁の刃が逃げてしまい、均一な厚みでスライスすることが極めて困難になります。
食感を激変させる「厚切り牛タン隠し包丁の入れ方」
タン元を8mm以上の厚切りで楽しむ際に欠かせないのが、厚切り牛タン隠し包丁の入れ方です。仙台の有名専門店が分厚い牛タンを提供しながら驚くほどサクッと噛み切れる秘密は、この隠し包丁(スリット)にあります。
切り分けたタン元の表面に対して、深さ半分(厚みの約1/2)まで、約3mm〜5mm間隔で斜めに細かく切れ目を入れます。さらに裏面にも、表面のスリットと交差するように角度を変えて切れ目を入れます。この格子状の切り込みにより、以下の3大効果が生まれます。
- 筋繊維の分断: 噛んだ瞬間に肉が心地よく解ける「サクッとした歯切れ」を生み出す。
- 熱伝導の均一化: 厚切り肉の中心部まで素早く火が通り、外側を焦がさずに適正温度へ到達させられる。
- 味の浸透: 塩や調味だれが肉の深部まで素早く馴染む。