アメリカ合衆国の首都の歴史を紐解くと、最初からワシントンD.C.だったわけではありません。独立宣言が採択されたフィラデルフィアや、初代連邦議会が開かれたニューヨークなど、首都機能は複数の都市を転々としていました。
決定的な転機となったのが、1783年にフィラデルフィアで起きた「ペンシルベニア兵士の反乱事件」です。給与未払いに怒った元大陸軍兵士たちが議事堂を包囲した際、州政府が治安出動を拒否したため、連邦議員たちは命からがら逃げ出す事態に陥りました。「州政府の警察力に頼る都市では、連邦政府の安全と独立性を担保できない」という痛烈な教訓が刻まれた瞬間でした。
その後、1790年に開催された密談において、財務長官アレクサンダー・ハミルトンとトーマス・ジェファーソン、ジェームズ・マディソンによる歴史的合意(通称:1790年の妥協)が成立します。北部各州が抱えていた独立戦争の巨額債務を連邦政府が肩代わりする代わりに、首都の所在地を南部寄りのポトマック川流域に設けるというディールです。この選定を一任されたのが、初代大統領ジョージ・ワシントンでした。
1790年から1800年までの10年間、フィラデルフィアを臨時首都として機能させつつ新都市の建設を推進。1800年、第2代大統領ジョン・アダムズの時代に、連邦政府機関は正式に建設されたばかりのワシントンD.C.へと完全移転を果たしました。