めまいの直接的な引き金となる耳石は、内耳の「前庭」にある耳石器(卵形嚢・球形嚢)のゼラチン質の上に無数に乗っている炭酸カルシウムの微小な結晶です。頭の傾きや直線加速度を感知するセンサーとして機能していますが、何らかの衝撃や変性によってこの耳石が剥がれることがあります。
剥がれ落ちた耳石の破片が、隣接する三半規管(後半規管・外側半規管・前半規管)の内部へ迷入する半規管への耳石移動経緯こそが、めまい発症の構造的メカニズムです。頭を動かした際に管内のリンパ液の中で耳石が重力に従って移動し、その水流が感覚受容器であるクプラを過剰に刺激します。その結果、目や首からの情報と内耳からの信号に深刻なズレが生じ、脳が「激しく回転している」と誤認して強い回転性めまいと眼振(目の揺れ)が引き起こされます。
耳石が剥がれる原因として、臨床現場で特に重視されている要素は以下の通りです。
- 加齢と骨代謝の低下:加齢に伴い耳石自体の結合力が脆くなります。特に閉経後の女性はエストロゲンの減少によって骨密度が低下し、耳石が剥離しやすくなることが報告されています。
- 長時間の同じ姿勢・寝返り不足:デスクワークや就寝時に同じ向きで寝続けると、重力によって耳石器の一部分に負荷がかかり続け、剥がれた耳石が一箇所に蓄積しやすくなります。
- 頭部への外傷や強い衝撃:交通事故やスポーツ時の転倒、激しい頭部の打撲などが引き金となり、物理的な衝撃で大量の耳石が脱落します。
- 内耳疾患の後遺症:前庭神経炎や突発性難聴、メニエール病などを経験した部位では、内耳組織の脆弱化により耳石が剥がれやすくなります。