「たかが耳に水が入ったくらいで」と放置するのも賢明ではありません。通常、健康な耳であれば外耳道に入った少量の水は体温によって数時間から半日程度で自然蒸発します。しかし、水が半日〜1日以上経っても抜けない場合、あるいは異変が現れた場合は、外耳道炎と中耳炎のリスクを疑う必要があります。
プールや公衆浴場の水には微細な雑菌や塩素が含まれており、ふやけた外耳道皮膚に細菌が繁殖すると「スイマーズイヤー(外耳道炎)」を発症します。耳たぶを引っ張ったり、耳の穴の前にある軟骨(耳珠)を押したりしたときに強い痛みを感じる場合、外耳道が細菌感染を起こしている決定的なサインです。また、以前から鼓膜に小さな穴(穿孔)が開いていた場合、水が中耳腔まで達して化膿性中耳炎を引き起こす危険もあります。
以下の症状が1つでも当てはまる場合は、家庭での対処を直ちに中止し、耳鼻咽喉科を受診すべき目安と判断してください。
- 24時間以上経過しても耳の閉塞感や聞こえにくさが解消しない(耳垢塞栓の疑い)
- 耳介を引っ張ったり押したりするとズキズキとした痛みがある(急性外耳道炎の疑い)
- 耳の中から悪臭のする液体や黄色い膿(耳だれ)が出てきた
- 自分の心音や拍動が「ドクンドクン」と耳の奥で大きく聞こえる
- めまい、吐き気、あるいは37.5度以上の発熱を伴っている
【プロの結論】おすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
耳の水トラブルにおいて、「自宅でセルフケアを試してよい人」と「直ちに医師に委ねるべき人」の境界線は極めて明確です。
【自宅での裏ワザを試してよい人】:過去に中耳炎や鼓膜穿孔の既往歴がなく、耳の痛みが一切ない成人。水が入ってから数時間以内で、ティッシュこよりや呼び水法を冷静に行える環境にある人。
【絶対にセルフケアを避け、受診すべき人】:幼児・学童期の子ども(外耳道が細く暴れて鼓膜を損傷するリスクが高い)、過去に鼓膜チューブ挿入術を受けた人、すでに痛み・痒み・異臭がある人、そして元々アレルギー性皮膚炎などで外耳道の皮膚が荒れやすい人。耳鼻科の外来処置であれば、吸引管や顕微鏡を用いてわずか数十秒〜数分、痛みもなく安全に水と耳垢を除去できます。