ネット上の作画講座では「手は自分の手をスマホで撮影してトレスすればいい」というアドバイスが頻繁に見られます。しかし、これは初心者にとって極めて危険な罠になり得ます。
スマートフォンの広角カメラで至近距離から手を撮影すると、中心部が膨らみ、周辺部が極端に縮小する「レンズパースの歪み」が必ず発生します。骨格の構造を理解していない初心者がその写真をそのままトレスすると、指先だけが異常に巨大化したり、手首の角度がねじれたりした不気味な絵が完成してしまいます。
また、「補助線(アタリ線)を細かく何十本も引くほど正確になる」というのも典型的な誤解です。関節ごとに無数の丸を描き、指の長さに合わせて細かなグリッドを重ねすぎると、かえって線画が線に埋もれ、全体としての立体の塊(マッス感)が見失われてしまいます。プロが引くアタリは驚くほどシンプルであり、「甲の箱」と「指の板」という最小限の立体で全体像を捉えています。