将棋界の歴史において、加藤一二三と藤井聡太竜王・名人の間には、運命的とも言える深い繋がりが存在します。歴史上、中学生でプロ入りを果たした棋士は、加藤一二三、谷川浩司、羽生善治、渡辺明、藤井聡太のわずか5名しか存在しません。その先陣を切ったのが加藤一二三であり、半世紀以上の時を経て最年少記録を塗り替えたのが藤井聡太でした。
さらに劇的だったのは、2016年12月24日に行われた藤井聡太の公式戦プロデビュー戦(竜王戦6組ランキング戦)です。この歴史的対局の相手を務めたのが、当時現役最年長棋士であった76歳の加藤一二三でした。その年齢差は実に62歳6か月。プロ公式戦における史上最大年齢差の対局として世界的なニュースとなりました。
この対局で加藤一二三は、自らの代名詞である得意戦法「棒銀」を繰り出し、新星・藤井聡太に対して真っ向勝負を挑みました。敗れはしたものの、対局後の会見で加藤一二三は「非常に落ち着いていて隙がない。素晴らしい才能を持っている」と藤井聡太の実力を誰よりも早く認め、惜しみない称賛を送りました。
両者には「詰将棋に対する類稀な解答速度と情熱」「子どもの頃から盤面だけに没頭してきた純粋性」という強い共通点があります。加藤一二三が切り拓いた中学生棋士の道は、62年の歳月を経て藤井聡太へと受け継がれ、現在の将棋界の黄金期を支える礎となっています。