2人の軌跡を語る上で避けて通れないのが、2020年に起きたアルバム『SI』の発売中止事件です。2005年、シングル『青春アミーゴ』が累計出荷160万枚を超える社会現象を巻き起こしてから15年。2020年は「亀と山P」として初のオリジナルアルバムを引っさげ、東京ドームおよび京セラドーム大阪での大規模ツアーが発表されていました。しかし、このプロジェクトは幻となって消え去ることになります。
公式発表資料および当時のレコード会社関係者の証言を総合すると、中止に至った経緯は単一の理由ではなく、不運な外的要因とビジネス上の契約問題が複雑に絡み合った結果でした。当初、2020年春に予定されていたツアーとCDリリースは、世界的な新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって延期を余儀なくされました。そして延期期間中であった同年秋、山下の海外作品出演オファーに伴う事務所退所が急遽決定したのです。
当時、ネット上では「山下が独断でプロジェクトを投げ出した」かのような批判的な言説も散見されました。しかし実態は、「旧ジャニーズ事務所所属タレント」と「独立した個人事業主」との間における原盤権・肖像権・配信プラットフォームの契約処理が、当時の業界慣習では極めて困難だったことが主たる要因です。決して二人の人間関係の決裂が引き金になったわけではありません。