「dTVを起動しようとしたがアプリが開かない」「井上尚弥の試合映像が見つからない」という疑問の答えは明快です。NTTドコモが提供していた動画配信サービス「dTV」は、2026年4月12日に新ブランド「Lemino(レミノ)」として大規模刷新され、従来のdTVサービスは同年6月30日をもって完全に幕を閉じました。
では、なぜドコモは長年親しまれてきたdTVブランドを捨て、莫大なコストを投じてまでLeminoへの刷新を決断したのでしょうか。公式発表資料および当時の事業説明会において、同社は「映像配信市場における競争環境の激変」を主な要因として挙げています。従来のdTVは月額550円(税込)という圧倒的な低価格を武器に会員数を伸ばしてきましたが、NetflixやAmazonプライム・ビデオといった外資系メガプラットフォームが巨額の制作費を投じて独自コンテンツを囲い込むなか、低単価モデルのままでは大型スポーツ放映権の獲得競争に勝ち残れなくなっていたのです。
その転換点となった象徴的なイベントこそが、2026年12月13日に行われた「井上尚弥 vs ポール・バトラー」の世界4団体王座統一戦でした。この歴史的一戦を「dTV独占生配信」として敢行したドコモは、サーバー増強と巨額の放映権取得に踏み切り、有料会員獲得において手応えを得る一方で、現行システムのキャパシティと収益モデルの限界に直面しました。世界水準のファイトマネーと高画質・低遅延のライブ配信インフラを両立させるため、月額990円(税込)の「Leminoプレミアム」を軸とする高付加価値プラットフォームへの脱皮を余儀なくされたというのが、サービス終了とリニューアルの決定的な背景です。