事件当時の世論は、一人の被害者に対する同情論だけでは終わりませんでした。当時の2ちゃんねる(現5ちゃんねる)やSNS、街頭インタビューでは、歌舞伎界のプリンスが見せた「夜の顔」に対する厳しい批判が渦巻いていました。
「一方的に殴られた被害者であることは事実だが、泥酔して一般人に絡むのはプロとして脇が甘すぎる」「成田屋の看板に甘えていたのではないか」といった厳しい意見がインターネット上を席巻し、自業自得論と過度な暴力への怒りが真っ向から対立する構図となりました。メディア各社も海老蔵の過去の武勇伝や豪快な夜遊びを連日のように掘り起こし、世論のバッシングは過熱の一途をたどりました。
この厳しい逆風を鎮めたのは、海老蔵自身の沈黙と、妻である小林麻央さんの献身的な支えでした。自宅前に群がる報道陣に対して丁寧にお茶を配り、夫の至らなさを真摯に詫びる麻央さんの姿は、硬化していた世論を徐々に軟化させました。自らの傲慢さを恥じ、茶道や稽古に没頭する海老蔵の姿勢が報じられるにつれ、批判の声は「舞台での再起を注視する」という建設的な視座へと移り変わっていったのです。