花火師に関する最大の疑問として挙げられるのが、「夏が終わったオフシーズンは何をして稼いでいるのか」という点です。世間の誤解とは異なり、正規雇用の花火師にとって秋から冬にかけての期間こそが最も重要で忙しい製造期間となります。
花火大会で打ち上げられる花火玉は、1年を通じて計画的に製造されています。冬場の工場内では、以下のような繊細な工程が連日行われます。
- 配合(はいごう):酸化剤や可燃剤、金属粉を厳密な比率で調合する作業。最も静電気や摩擦事故への警戒を要する工程。
- 星掛け(ほしかけ):火薬の粒に調合した粉末を幾重にもコーティングし、天日で乾燥させながら数週間かけて球形に育てる作業。
- 玉込め(たまごめ):完成した「星」と「割薬(わりやく)」を球状の半球皮(クラフト紙の殻)に均等に敷き詰める作業。
- 玉貼り(たまばり):半球を合わせた後、外側にクラフト紙を何層も糊で均等に貼り重ねて強度を高める作業。
火薬は湿度が高いと吸湿して品質が落ちるため、乾燥した冬場は製造に最適な季節です。また、暖房機器による引火リスクを避けるため、真冬の火薬工場内は暖房器具の使用が厳密に制限され、極寒の中で手袋を外して指先の感覚を頼りに作業を行う過酷さがあります。
製造業務に加えて、2026年現在はスキー場のゲレンデ花火、テーマパークでの通年打ち上げ、自治体のカウントダウンイベント、さらにはインバウンド富裕層向けのプライベート花火など、冬場における打ち上げ需要も増加傾向にあります。冬は決して休業期間ではなく、来るべき夏の晴れ舞台に向けた仕込みと技術の研鑽に費やされているのが実態です。