日本映画やVシネマの歴史を振り返ると、前貼りにまつわるエピソードには枚挙にいとまがありません。昭和から平成初期の撮影現場では、予算や知識の不足から梱包用ガムテープを直接肌に貼り、撮影終了後に絶叫しながら剥がしたというベテラン俳優の武勇伝が語り草になっていました。
かつては助監督やメイクスタッフが見よう見まねで作業を行っていたため、テープのかぶれによる皮膚科通いや、剥がれる恐怖による演技への悪影響など、演者への負担が極めて大きい時代が長く続きました。
しかし、映像制作の現場環境は劇的な進化を遂げています。現在、濡れ場や露出度の高いシーンの撮影現場では、「インティマシーコーディネーター(IC)」と呼ばれる専門スタッフの導入が不可欠なスタンダードとなりつつあります。
インティマシーコーディネーターは、監督の演出プランと俳優の同意範囲を事前にすり合わせ、合意に基づいた安全な撮影環境を構築します。前貼りの素材選定や実際の装着・脱着プロセスも、専門知識を持つスタッフが衛生管理を徹底した個室で実施。演者が肉体的・精神的な苦痛を感じることなく、安全に表現へ専念できる体制が確立されています。