クエン酸と重曹の黄金比率と危険性の真相|混ぜると落ちない理由を解説

クエン酸と重曹の黄金比率と危険性の真相|混ぜると落ちない理由を解説

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「動画のように泡立ててシンクやお風呂を擦ったのに、水垢や油汚れが全然落ちなかった」という不満は、ハウスクリーニングのプロが最も頻繁に耳にする相談の一つです。そしてこの不満は、感覚的な問題ではなく純然たる化学的事実に基づいています。結論から言えば、クエン酸と重曹を最初から混ぜてしまうと、それぞれの化学的な洗浄力は中和によって大幅に失われます。

洗剤が汚れを落とす基本原理は「酸とアルカリの対立」にあります。水垢や石鹸カス、尿石、アンモニア臭といった「アルカリ性の汚れ」は、pH2〜3前後の酸性物質であるクエン酸によって中和され、分解・溶解します。反対に、皮脂汚れやキッチンの油汚れ、食品の焦げ付きといった「酸性の汚れ」は、pH8.2前後の弱アルカリ性である重曹によって脂肪酸が石鹸化・乳化され、洗い流しやすくなります。

ところが、両者を同時に混ぜてしまうと、酸とアルカリが互いに引き合って中和反応を起こし、液性は中性(pH7付近)に近づいてしまいます。つまり、酸がアルカリ性汚れを溶かす力も、アルカリが酸性汚れを分解する力も、自ら打ち消し合って無力化してしまうのです。それにもかかわらず、なぜ世間では「混ぜて使う掃除法」が推奨されているのでしょうか。

その唯一の理由は、激しく沸き立つ二酸化炭素の泡による「物理的な剥離作用(汚れを浮かせる力)」にあります。炭酸の細かな泡が汚れの微小な隙間に入り込み、力学的に汚れを浮き上がらせる効果だけは期待できます。したがって、化学分解によって頑固な汚れを溶かしたい場所で混ぜて使うのは完全な逆効果であり、泡の衝撃力でヘドロやぬめりをこそぎ落としたい排水溝のような場所に限って有効な手段となるのです。

佐々木 一輝
著者

佐々木 一輝

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。