『ファインディング・ニモ』の背景には、大人の知的好奇心を刺激するディープな裏設定や、公開後にファンの間で議論を呼んだ都市伝説が存在します。
最も有名な生物学的事実は、カクレクマノミの性転換にまつわる生態です。実際のカクレクマノミの群れは、一番大きな個体がメス、二番目に大きな個体がオスとなり、メスが死ぬと残されたオスがメスへと性転換します。劇中の冒頭で母コーラルが命を落とした際、生物学の法則に従えば「マーリンがメスになり、ニモが成長してオスになる」というプロセスを辿るはずですが、本作ではあえて人間的な父子愛のドラマとして昇華されています。
また、ラテン語で「Nemo」が「誰でもない(Nobody)」を意味することから、ファンの間では「ニモは最初から助からず、悲嘆に暮れたマーリンが喪失感を受け入れるための心の旅(五段階の悲嘆プロセス)を描いた精神的寓話ではないか」という都市伝説的な考察も生まれました。もちろん公式の意図は愛と自立の冒険譚ですが、多層的な解釈を許すほど脚本の構成が緻密である証拠と言えます。