日本全国の百貨店や商業施設に洋菓子店がひしめくなか、滋賀お土産人気ランキングにおいて不動の首位を維持し続けているのがクラブハリエのバームクーヘンです。この圧倒的なブランド力は、一朝一夕に築かれたものではありません。その背景には、老舗和菓子舗「たねや」の歴史と、西洋菓子への飽くなき挑戦という必然のドラマが存在します。
創業1872年の「たねや」が洋菓子の製造を開始したのは1951年。創業者精神である近江商人の「三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)」を基礎としながら、1973年にバームクーヘンの開発に着手しました。当時、日本で流通していたバームクーヘンは、本場ドイツの質実剛健なレシピに忠実な、水分量が少なくどっしりとした固い食感が主流でした。しかし、同社の職人たちが目指したのは、日本人の味覚に寄り添う「まるでスポンジケーキのように柔らかく、口の中でとろけるバームクーヘン」だったのです。
この食感を生み出すため、配合や火加減の試行錯誤が重ねられました。卵の泡立て加減や気温・湿度に応じた微細な焼成コントロールは、熟練の職人による感覚のチューニングが不可欠とされています。さらに外側をコーティングする砂糖衣(フォンダン)のシャリシャリとした小気味よい食感と、生地のしっとりとした柔らかさのコントラストが、唯一無二の黄金比を完成させました。滋賀発の洋菓子が全国を席巻した理由は、単なるブームではなく、職人技に裏打ちされた味覚の構造改革にあります。