ネット上の掲示板や知恵袋などで散見される「性経験が多いと乳輪が大きくなる」「刺激を与えすぎたから肥大した」という言説は、解剖学的に全く根拠のない悪質な俗説です。乳輪が大きい原因の根底にあるのは、外部刺激ではなく内分泌系の働きと遺伝的形質に集約されます。
身体の発育期において主導的な役割を果たすのがホルモンバランスの影響です。第二次性徴期を迎えると、卵巣から分泌されるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)が急増し、乳腺組織の発達を促します。このとき、乳輪周囲の皮膚組織にある受容体がホルモン刺激にどれだけ反応するかは、個々人の生まれつきの遺伝によってあらかじめプログラミングされています。親の骨格や体質が遺伝するのと同様に、乳輪の面積や皮膚の伸展性、メラノサイト(色素細胞)の密度も先天的要素が色濃く反映されます。
成人以降における最大の形態変化をもたらすのは、妊娠と授乳による変化です。妊娠初期からプロラクチンやヒト胎盤性ラクトゲンなどのホルモンが大量に分泌され、乳腺細胞は劇的に増殖します。これに伴い、乳輪は新生児が視認しやすいように直径が平均1.5倍から2倍程度まで拡大し、色調も濃くなります。卒乳後は乳腺の萎縮に伴ってある程度収縮するものの、一度引き伸ばされた皮膚のコラーゲン線維やエラスチンが完全に元通り復元するわけではなく、皮膚の弛緩とともに大きさが残存することは極めて一般的な生理現象です。