冨安のキャリアにおける最大の障壁となっているのが、皮肉にもその「超人的な身体能力と敏捷性」です。ボローニャ時代からアーセナル加入以降に記録された主な怪我歴と離脱期間を振り返ると、右ふくらはぎの肉離れ、膝の手術、ハムストリングの損傷など、下半身の特定部位に高強度の負荷が集中している実態が浮き彫りになります。
トップレベルのスポーツ医科学・バイオメカニクスの観点から分析すると、冨安のプレースタイルには驚異的なストップ&ゴー、急激な方向転換、そして188cm・84kgの体躯を瞬時にトップスピードへ引き上げる爆発的なトルクが存在します。プレミアリーグの試合強度は世界最高峰であり、時速30kmを超えるスプリントと激しいコンタクトが1試合中に何度も繰り返されます。
特に左右両サイドバックとセンターバックをハイレベルにこなすユーティリティ性が災いし、ポジションごとに要求される走行距離や加速・減速のパターンが頻繁に変化することも、筋膜や腱組織への過負荷(オーバーユース)を引き起こす一因と指摘されています。単なる筋力不足ではなく、「自身の強大な出力に筋組織の柔軟性と回復スピードが追いつかない」という、超一流アスリート特有の構造的ジレンマが離脱の背景にあります。