テレビ周辺の配線器具において、消費者が最も混同しやすいのが「分波器」「分配器」「分岐器」の3種類です。いずれも金属製または樹脂製の小型ボディにF型同軸コネクタが複数備わっているため外見は酷似していますが、内部回路の電気的処理はまったく異なります。
アンテナから屋内に引き込まれる同軸ケーブルの中には、地上波デジタル放送(UHF帯:470MHz〜710MHz)と、衛星放送(BS/CS帯:1032MHz〜3224MHz)という異なる周波数の電波が混合された状態で流れています。この混合電波をそれぞれの専用周波数に「分ける」役割を担うのが分波器(セパレーター/ディプレクサ)です。一般的な家庭用テレビの背面には地デジ用とBS/CS用のアンテナ入力端子が独立して設けられているため、壁の端子が1つしかない場合は分波器を使って信号を2系統に振り分ける必要があります。
対して分配器(スプリッター)は、入力された同一の混合電波を2つ以上の系統へ均等に「株分け」する機器です。リビングと寝室など、2台以上のテレビで同じ放送を受信したい場合に使用します。また、分岐器(タップオフ)は主にマンションやビルなどの共同受信設備で用いられ、幹線からごく一部の電波(10〜20%程度)だけを小分けに取り出し、大半の信号を次の階層へ送り出す特殊な機器です。
分波器は周波数帯ごとにフィルターを通して振り分ける構造のため、電波エネルギーの損失(減衰)が1.5dB〜2.5dBと非常に小さく抑えられます。一方、分配器は電波そのものを物理的に半分(2分配の場合)に削ぎ落とすため、挿入するだけで約4.0dB〜6.0dBの電波減衰が発生します。用途を取り違えると、アンテナレベルの低下によるブロックノイズや受信不能トラブルを招く直接的な引き金となります。