人間に電流が流れたとき、体内で何が生じるのでしょうか。電気ショックの根源的な危険性は、神経や心臓が日常的に微弱な生体電気信号によって制御されている点にあります。体外から異質な電流が侵入すると、これらの生体制御が強制的に上書きされ、全身の神経系と筋肉が過剰な暴走状態に陥ります。 一般に「電圧(ボルト:V)が高いほど危険」と認識されがちですが、医学的・電気生理学的に人体へ損傷を与える直接の決定打は「体内を流れる電流の強さ(アンペア:A / ミリアンペア:mA)」と「通電時間」、そして「通電経路」です。 国際電気標準会議(IEC)の基準および救急医学の定説によると、人体が感知できる最小電流(感知閾値)はわずか1mA程度です。しかし、電流値が上昇するにつれて筋肉が強く収縮し、自力で電極を離せなくなる「離脱限界電流(不随限界電流)」に達します。さらに電流値が上がると、心臓の規則正しい拍動リズムが乱れ、血液を送り出せなくなる心室細動が引き起こされ、短時間で心停止に至ります。
特に注意すべきは通電経路です。「左手から右手」あるいは「左手から両足」へ電流が抜けるルートは、経路の途中に心臓が位置します。この場合、わずか数秒の通電であっても心室細動が誘発される確率が跳ね上がります。