この店を一躍全国区へと押し上げた契機の一つが、『ミシュランガイド愛知・岐阜・三重2019特別版』でのビブグルマン選出だ。しかし、店が紡ぐ蕎麦の本質は、そうした肩書きを軽々と凌駕する。
看板となるのは、透明感あふれる喉越しと穀物の力強い香りが共存する十割蕎麦。厳選された玄そばを自家製粉し、その日の湿度や気温に合わせて水分量を極限まで微調整しながら手打ちされる。つゆをつけずに手繰ると、舌の上に広がるのは澄んだ湧水と大地の甘みだ。
さらに訪れる者を魅了してやまないのが、自家農園の茶葉を惜しみなく練り込んだ限定の茶そばである。一般的な茶そばのような着色料や香料のわざとらしさは皆無。口に含んだ瞬間に広がる青く爽快な茶の香りと、後から追いかけてくる蕎麦本来のコシ。二色盛りや三色盛りで食べ比べれば、蕎麦という料理の底知れぬ奥深さを思い知らされる。