2000年代初頭、富士見ミステリー文庫から刊行された当時の衝撃は計り知れない。萌えや学園ファンタジーが主流だったライトノベルの棚に、突如として持ち込まれた凄惨な家庭内暴力、貧困、地方都市の閉塞感。そのあまりに苦い読後感は、今で言う「イヤミス(嫌な後味が残るミステリー)」の先駆けとなった。
桜庭一樹の筆致は冷徹でありながら、詩的な狂気を帯びている。読者の期待を裏切るように容赦なく訪れる破局。それはライトノベルという枠組みを内側から破壊し、一般文芸界へ躍進する彼女の類まれな才能を世に見せつけた瞬間だった。