結論から申し上げますと、中袋がない香典袋にお金を直接入れて持参することは、一切失礼にあたりません。市販されている水引が印刷された簡易型の不祝儀袋や、一部の多当折(たとうおり)の製品には、もともと中袋が付属していないタイプが数多く流通しています。これは製造ミスや廉価版の不備ではなく、日本の伝統的な弔事儀礼に根ざした意味合いが込められています。
古来より日本の冠婚葬祭では、慶事において「喜びが重なるように」と二重の封筒や重箱を用いる一方、弔事においては「不幸が二重に重なる」「不幸が再び訪れる」ことを極端に忌み嫌う文化があります。そのため、あえて封筒を二重にせず、「一重の袋で一度きりに終わらせる」という祈りを込めて中袋を用いない形式が正式な礼法として受け継がれてきました。
特に東海地方や関西地方、北陸地方の一部地域では、「不幸を重ねない」実用的な知恵として、中袋を使わない外袋直入れが標準的な慣習として定着しています。包む金額が3,000円から1万円程度の場合、袋だけが幾重にも重なった豪華な水引袋を用いると「金額と外見の不釣り合い(虚礼)」と受け取られる懸念もあるため、印刷水引や多当折の中袋なしタイプを用いることは理にかなった選択です。