実写映画『東京喰種 トーキョーグール』の企画が立ち上がった際、業界内で最もキャスティングが困難視されていた役柄こそが神代利世でした。主人公のカネキ(窪田正孝)が一目惚れする知的な美貌と柔らかな佇まい、そして次の瞬間には標的の内臓を貪り尽くす狂気の飢餓感。この常軌を逸した落差を表現できる女優の選定は、映画全体の成否を左右する絶対条件でした。松竹および萩原健太郎監督率いる制作陣が白羽の矢を立てたのが、映画『フラガール』や『るろうに剣心』など多彩なキャリアを誇る蒼井優さんでした。
情報解禁当初、インターネット上では「蒼井優の透明感あるイメージと、グラマラスで妖艶なリゼのビジュアルには乖離があるのではないか」という懐疑的な声も散見されました。しかし、映画が劇場公開を迎えるや否や、そうした雑音は一瞬にして絶賛の嵐へと塗り変わります。喫茶「あんていく」で見せる伏し目がちな微笑みから一転、暗がりでカネキの肩口に噛み付く際の舌なめずりと血走った眼光。蒼井優さんの演技力は、単なるビジュアルの模倣を超え、「肉食獣が獲物をいたぶる本能的な悦び」を生々しくフィルムに焼き付けました。
当時のインタビューにおいて制作陣は、「リゼという存在は、カネキの平穏な日常を暴力的に破断する特異点。観客が完全に油断した瞬間、背筋が凍りつくような生理的恐怖を叩き込めるのは、確固たる演技論を持つ蒼井優さんしかいなかった」と証言しています。清楚派のトップランナーが魅せた容赦のない怪演は、実写邦画における悪女・捕食者描写の新たな到達点となりました。