ライバルたちの描き方においても、井上雄彦氏の手腕は神がかっている。天才と称されながらも釣り糸を垂らし、飄々とコートに立つ陵南の仙道彰。彼の底知れぬ余裕とバスケットボールそのものを愛する純粋さは、殺伐とした勝ち負けの世界にひとすじの風を吹き込む。
対照的に、絶対王者・山王工業のエース、沢北栄治。日本国内にはもはや敵がおらず、渡米を目前に控えながらも、試合中に「負けたことがない」ゆえの恐怖と歓喜に震える。強者ゆえの圧倒的な孤独と、純粋すぎるバスケへの衝動。敵役にまで命を吹き込む圧倒的な描き込みが、物語全体の熱量を底上げしている。