2023年7月14日に公開された『君たちはどう生きるか』は、スタジオジブリの歴史において最も特異な興行展開を見せました。事前の予告編・場面写真・声優キャストの一切を伏せる「宣伝なし(ノープロモーション)」戦略を採用したことで、情報社会に強烈なカウンターパンチを浴びせたのです。
公開直後のネット上の反応(Xや映画レビューサイト、5ちゃんねる等)は、従来のジブリ作品とは一線を画す激しい賛否両論の嵐となりました。
【否定・困惑派の意見】:
「トトロやラピュタのようなわかりやすい冒険活劇を期待していたら、完全に裏切られた。脈絡のない場面転換が多く、考察を強いられて疲弊した」「宮崎駿の個人的なトラウマや夢日記を見せられているようで、エンタメとしてのカタルシスがない」
【肯定・絶賛派の意見】:
「圧倒的な手描き作画の密度。アニメーション表現の極致に息を呑んだ」「吉野源三郎の原作を下敷きにしつつ、宮崎駿が自身を『眞人』、高畑勲を『大叔父』、鈴木敏夫を『アオサギ』に擬託した壮大な私小説。作家の魂の告白に立ち会えた」
観客の間で評価が二分した要因は、本作が「消費されるエンターテインメント」を放棄し、宮崎駿の深層心理と死生観をダイレクトに叩きつける純文学的アプローチをとった点にあります。しかし、世界的な評価は極めて高く、ゴールデングローブ賞アニメ映画賞に続き、第96回アカデミー賞長編アニメーション賞を受賞。日本興行収入は約93.3億円、全世界興行収入は450億円を突破し、作家性の追求と世界市場での商業的勝利を同時に成し遂げる結果となりました。