「ライオンのビールは水のように喉を通り、何杯飲んでも胃が重くならない」。常連客が異口同音に語るこの現象の裏には、科学的根拠に基づいた職人の技術が存在します。その根幹を成すのが、ビヤホールライオン銀座七丁目店が創業以来頑なに守り続ける伝統の一度注ぎ生ビールの技法です。
一般的な居酒屋では、ビールを注いだ後に泡専用の注ぎ口から後乗せする「二度注ぎ」が主流ですが、ライオンのカウンターでは注ぎ手が注出レバーを一瞬たりとも戻しません。専用のスイングカランから毎分10リットル以上の猛烈な勢いで注ぎ込まれるサッポロ生ビール黒ラベルは、ジョッキの中で激しいトルネードを起こしながら渦を巻きます。
この激しい対流によって、液体に含まれる余分な炭酸ガスが適度に抜け、苦味の角が取れて麦芽本来の上品な甘みが全面に引き出されます。同時に、液面にはきめ細やかで弾力のある「スフレ状の泡」が自然形成され、ビールの酸化を完璧に遮断する蓋の役割を果たします。
グラスを傾けた瞬間、唇を包み込むクリーミーな泡の冷たさと、それに続いて喉へと滑り込むシルキーな液体の温度差。この極上の喉越しを実現するため、カウンター奥のビールサーバーや配管は熟練の抽出技術者によって毎日寸分の狂いもなく徹底洗浄されています。「一度注ぎ」は、単なるパフォーマンスではなく、ビールを最良の状態で胃袋へ届けるための必然的な機能美なのです。