幼い男の子の心の揺れ動きを、当時18歳だった女優・上白石萌歌が演じ切ったことは、映画公開時にも大きな話題を呼んだ。幼少期特有の甘えた声、妹への嫉妬が爆発する金切り声、そして未知の世界に踏み出す恐れと好奇心。彼女が発する一音一音には、作られた「アニメの声」にはない、生の感情のざらつきが残されている。
細田監督はオーディションの段階から、単に「かわいい子供の声」を出せる役者ではなく、子供の本質的な感情の激しさを表現できる人物を求めていたという。上白石はこの難関を突破し、見事にクンちゃんという難役を自らのものにした。2026年の現在、ドラマや舞台、音楽活動で目覚ましい活躍を続ける彼女にとって、この作品での声優体験は役者としての表現の幅を決定的に押し広げるターニングポイントとなった。