本館の「宇治の間」に入ってまず目を奪われるのが、原寸大で精密に再現された「寝殿造」の模型と、圧倒的な存在感を放つ牛車(ぎっしゃ)だ。牛車の塗りの質感や飾りの織物に至るまで細部まで完璧に再現されており、当時の貴族たちがどのような目線で街を眺めていたのかを肌で実感できる。
だが、真の白眉は「香り」の演出だ。平安貴族たちが己のアイデンティティとして衣服に焚き染めた「薫物(たきもの)」の香りを再現した装置が設置されており、ボタンを押すと「薫」や「匂宮」をイメージした奥ゆかしい香気が漂う。視覚だけでなく嗅覚までもが平安時代へと引き戻される瞬間だ。実に粋な演出と言わざるを得ない。