この二つのドリンクは、誕生の経緯がまったく異なる。ここを押さえることが、違いを深く理解する鍵になる。
チューハイの発祥は昭和20年代〜30年代の東京、とくに下町の焼き鳥屋・大衆酒場にある。戦後まもない時代、ウイスキーは高価で庶民には手が届かなかった。そこで安価な焼酎を炭酸水で割り、庶民の「ハイボール」として提供し始めたのが「焼酎ハイボール」=「チューハイ」の原形とされる。東京・下町の焼き鳥文化と密接に結びついており、「チューハイ」という略称が定着したのは昭和50年代〜60年代頃とされる。
一方、「サワー」という名称が日本の居酒屋文化に広まった大きなきっかけとして業界関係者の間で語られるのが、株式会社博水社が1980年(昭和55年)に発売した「ハイサワー」だ。「わ・る・な・ら・ハイサワー」というテレビCMは大ヒットし、焼酎の割り材として全国的な認知を獲得した。このブームにより、関東を中心に「焼酎をハイサワーで割ったもの=サワー」という認識が急速に広まっていったと複数の業界資料は伝えている。
この歴史的経緯が、東西の呼び名の差にも影響を与えている。関東ではチューハイもサワーも比較的同義に使われるケースが多いのに対し、関西・西日本ではチューハイという呼称がより一般的で、「サワー」という言葉に対してやや距離を置く傾向がある。「炭酸割りカクテルの呼び方の地域差」は、まさにこうした歴史的文脈から生まれているのだ。
---