『天才バカボン』をはじめとする数々のヒット作は、徹底的な破壊と再構築の連続から生まれた。ナンセンスギャグの極致と評される作品群だが、その根底にあったのは「既存の価値観に対する徹底的な反逆」だった。しかし、笑いを提供し続けることの代償は大きく、常に新しいギャグをひねり出さなければならないという地獄のようなプレッシャーが、徐々に彼の肉体と精神を蝕んでいった。
手記に記された「笑わせるということは、自分の血を流すことだ」という一節は、笑いに人生のすべてを捧げた男の凄絶な自覚を物語っている。ギャグという刃で自らを傷つけながら、彼は大衆に笑顔を贈り続けていたのだ。