ジンギスカンに対して「匂いがきつい」「独特の臭みがあって苦手」という印象を持ち続けている方がいますが、2026年現在の札幌におけるチルド生ラム事情を知れば、その誤解は劇的に払拭されます。
かつて昭和の時代に流通していた羊肉の多くは、生後2年以上が経過したマトンを一度冷凍し、解凍時にドリップが肉表面を覆って脂が酸化したものでした。これがかつての「羊臭さ」の物理的な主因です。現在、札幌の優良専門店が仕入れているオーストラリアやニュージーランド産の生ラムは、生後1年未満の厳選個体を完全チルド(0〜2℃の未凍結状態)のまま空輸・保冷輸送したものです。不飽和脂肪酸が多く含まれる脂は融点が高いため人間の体内に蓄積しにくく、嫌な臭みどころか、上質な赤身牛肉よりも軽やかでクリアな後味を誇ります。
もう一つの決定的な盲点は、「北海道に行けばどこでも道産羊が食べられる」という思い込みです。農林水産省等の流通統計からも明らかなように、日本国内で消費される羊肉のうち、国産羊肉のシェアはわずか0.5%〜1%未満に過ぎません。残りの99%以上は輸入肉です。したがって、札幌市内の大半の店舗で出されている極上の生ラムも、基本はオーストラリアやニュージーランドの豊かな牧草で育った輸入肉です。
もしメニューに「北海道産」と明記されている場合、1人前の価格が輸入肉の2倍から3倍(1人前3,000円〜4,000円台)に跳ね上がるのが業界の適正相場です。安価な食べ放題店で「北海道名物だから道産肉だろう」と誤解しているケースが散見されますが、輸入肉の高品質なチルド技術と、本物の道産羊肉の希少価値は、明確に区別して認識しておく必要があります。