近年の周産期医療において超音波診断装置の解像度が飛躍的に向上した結果、妊娠中期(20週前後)以降のスクリーニング胎児エコーで「赤ちゃんの腎臓が腫れている(胎児水腎症)」と指摘されるケースが急増しています。出産を控えた母親にとって、医師からの突然の宣告は計り知れない心理的ショックをもたらします。
ある母親が育児コミュニティに残した手記には、当時の切実な胸中が克明に綴られています。
「妊娠28週のエコーで『胎児水腎症の疑いがある』と言われ、頭の中が真っ白になりました。ネットで検索すれば『手術』『腎不全』『透析』という恐ろしい言葉ばかりが並び、自分を責めて毎晩泣き明かしました。しかし、出産後に小児泌尿器科の専門医から『赤ちゃんの水腎症の約7割から8割は、成長に伴って自然に治っていくから焦らなくていい』と説明を受け、肩の荷が下りたのを覚えています」
この手記にある通り、胎児期や新生児期に見つかる「先天性水腎症」の多くは、腎盂と尿管のつなぎ目(腎盂尿管移行部:UPJ)が一過性に未熟であったり、筋肉のねじれが原因であったりします。日本小児泌尿器科学会の長期追跡データでも、Grade 1〜2の軽度な先天性水腎症であれば、生後1〜2年の発育過程で自然治癒(自然軽快)する割合が過半数を占めることが実証されています。
ただし、出生後も拡張が増悪し続ける重度例や、尿路感染症(発熱を伴う腎盂腎炎)を繰り返すケース、あるいは膀胱から尿が腎臓へ逆流する「膀胱尿管逆流症(VUR)」が合併している場合は別です。この場合は自然経過を待つのではなく、タイミングを見極めた精密検査と、低侵襲な形成手術の選択が子どもの将来の腎機能を守る鍵となります。